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放送日:2016年10月29日
<ゲスト> 橋本不二子さん
今月は、しなの鉄道に乗って御代田駅でおり、画家の橋本不二子さんのご自宅兼、アトリエになっている真新しいお家をお訪ねしました。
橋本さんは、1935年神奈川県生まれ。文化学院美術科卒。グラフィックデザイナーとして活動。1989年より水彩画を描き始めて、81才の現在も、1年に100作以上の作品を精力的に描き続けておられます。野の花や木の実などを生き生きと描いた橋本さんの作品は、とても人気があります。
毎年10月に丸善・丸の内本店ギャラリーで個展を開催しておられ、私たちが橋本さんをお訪ねした日は、ちょうどその個展の初日でした。
橋本さんは、病気を抱えながら、5人の子供の育児や、義母の介護、仕事と、頑張り続けていたある日、限界を超えてしまったときに、アイルランド人の神父から「なぜ貴女は泣きわめかないのか?」と言われて、何日も無性に腹がたったそうです。「私がこんなに頑張っているのに。誰もが褒めてくれるのに。なぜこの人は褒めないのか」と。
けれども、そのときに、考えることばかりで、感じることをゴミのように押し込めてきた自分にはっと気づいて、感じることこそが神様から誰もが平等にいただいている、間違いのないものだと気づいたそうです。
それで50代になって水彩で植物を描くようになって、タクシーで周囲の森の中に出かけては、ふっと目に留まったものを摘んで来て描くようになったそうです。徹底して考えることを排して、本当に自分が感じていることを大切にする生活。
そうすると、今、見ているものは、実は見ておらず、子供の頃の何の欲も考えもなく心のままに見て感動していた頃の自分こそが本当の自分だと気づき、その幼い頃の心で植物の生気をキャンバスに写しこむことが自分の仕事と感じるようになったそうです。
その意味で、私に対しても「現在見えないことは何のハンディーにもならないですよ。子供の頃に見ていた、その素直な感覚を信じればいい」と、確信をもって言ってくださり、実際に1冊の本を開いて、ひとつの裏町の早朝のような景色を説明してくださり、「ほらね、貴女は見えているのよ」と言ってくださいました。そのときは涙はでませんでしたけど、今、思い返すと涙が出ます。
橋本さんの力強いメッセージを、自分を探し求めている方々の胸に、ぜひ、お届けしたいと思います。
橋本不二子オフィシャルサイト
http://www.hashimotofujico.net/
(文/広沢里枝子)
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