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インタビュー「私と仕事」

第3回 エプソンコーワ株式会社勤務 塚越加枝さん 2004・7

 今回はパワフルで聡明な私の若い友人、塚越加枝さんを紹介します。「はっ!」と可愛いかけ声をかけながら、車いすで段差を乗り越え、冷蔵庫を開け閉めして、美味しい手料理をご馳走してくれる加枝さん。加枝さんは1975年生まれ。幼い頃の事故がもとで脊髄損傷による両下肢の機能障害となり、常に車いすを使っています。

 小・中学校時代は地域の普通校で、高校は通信制で学び、大検を取得して信州大学人文学部へ進学。卒業後、アメリカのバークレイに留学し、帰国後、エプソンコーワ株式会社に就職しました。

  現在は在宅勤務。プラットホーム事業部のマニュアルグループで、主に翻訳の仕事をしています。広々とした仕事部屋を備えた彼女の新居で、お話を伺いました。

里枝子
「初めて加枝ちゃんが私のラジオ番組に出演してくれたのは大学生になった頃だったね。現役で信大に受かるなんて、一人でどうやって勉強したのって聞いたら、加枝ちゃんが言ったのよね。『目の開いている限り勉強しました』って。」
加枝
「うわあ、生意気な奴ー!」
里枝子
「でも、実際そのくらい勉強したんでしょ?」
加枝
「しましたね。自分で時間割を書くんですよ。1時間目は国語、2時間目は数学、3時間目は社会みたいな… そういう時間割をつくって、その通りに勉強していました。私、中学生の頃から自分一人で勉強するのが好きなんですよ。やっぱりそれは、今私が一人で仕事をしているベースにあるかもしれませんね。」
里枝子
「加枝ちゃんが次にラジオに出演してくれたのはバークレイから帰った後だったね。就職がみつからなかった時期で、ラジオで言いたいことがあったら言ってって私が言ったら、加枝ちゃんは言ったよね。『チャンスをください!やらせてみてください!』って。あの頃はどんな気持ちだったの?」
加枝
「もどかしかったです。私が滞在していたカリフォルニアのバークレイでは仕事をしている障害者の姿をいっぱい見ていたし、能力があればきちんと仕事ができるんだっていうのを、まさに目の当たりにしていたので。日本に帰ってきた時に、私の経歴云々とか能力云々でなく、まず、設備が無いからって断られるのがすごくくやしかったです。」
里枝子
「あの後、どうやって今の職場に出会ったの?」
加枝
「ハローワークから紹介してもらって、会社に行って面接と試験を受けました。受かりたかったですよ。社屋を建てる時って、まあ、普通に建てて、その後車いすの人が入るからって、あわてて改修することが多いと思うんですけど、うちの会社は初めから車いす用のトイレがあったんです。しかも、社員通用口の方にも、しっかりスロープがついていて。もちろん中はフラットという職場だったので、ああ、ここで働きたいなあって第一印象からそう思いました。」
里枝子
「もともと色んな人が働くことを想定してつくられた会社なのね。」
加枝
「そうだと思いますよ。だって、あの時代に、まず車いす用のトイレをつけるとか、社員用のワーキングスペースを広くとったりとか。個々のスペースをプライベートな感じできちんと確保したりとか、ネットワーク系のこともどんどん取り入れたりとか。社長には先見の明があるんじゃないですかね。通路も広いんですよ。社員が気持ちよく仕事ができるために、それだけのスペースを確保したいという社長の意向があって。結果としてそれが、私が動きやすい職場になっているわけです。」
里枝子
「職場の人間関係はどうですか?」
加枝
「そこがすごく良いの。必要な所は助けてくれるけど、基本的には平等です。それもみんながそう。だから、仕事で駄目なことは本当に駄目出しされるし、やらなきゃいけないことは障害者だからできないとか、そういう甘えは、ある意味許されないことです。障害者の訳したものだからスペルミスがあっていいってもんじゃないんですよ。お客様にとって私は同じエプソンコーワの社員であって、あくまでエプソンコーワをバックにしょってるわけですから。で、その他にたとえば出張する時に近くに車いす用の駐車場があればそこを手配してくれるとか、重い機材を持ってくれるとか、そういう必要なところは手を貸してくれるんです。もちろん足りないところもありましたよ。私が車いすを使う最初の社員だったってこともあると思うんですけど。でも、ああ、こうすればいいんだなってわかると、そういう風にやってくれるようになって。」
里枝子
「仕事をきちんと評価されているから、協力も得られるんでしょうね。」
加枝
「その面で評価されるのは本当に嬉しいです。あっ、でも言いましたっけ?去年、会社から優秀社員賞をいただいたって…」
里枝子
「わあ、おめでとう!そういうことは声を大にして言わなきゃ。ところで、今はどんな働き方をしているの?」
加枝
「昇進試験を受けて1等級あがって在宅勤務が認められました。勤務形態は基本的に私の裁量なんですが、今は直属の上司と話し合って9時から6時で仕事をしています。お昼休みはみんなと同じ、12時から1時にとって。その他の休みは適宜とるようにしています。仕事に入ったら、そこは会社と同じって、私は思っているんです。ただ、褥そうの問題もあるから、一定時間は完全に横になって休む必要があるんですけど。在宅だと、好きな格好をして休めますから、その点が楽ですね。本社ではチームミーティングが週に1回ぐらいあるので、それに合わせて出社していて。他に研修などで本社へ行くことがあります。」
里枝子
「加枝ちゃんは、働ける限り仕事を続けたいんでしょ?」
加枝
「続けたいですね。最初、私はライターで入って、ライターっていいなって思っていたんですけど。翻訳にシフトしてから、翻訳って一生続けられるなって今、思うんですよ。翻訳って、本当に奥が深くて正解がない世界。たとえば、ある英語の一文があったとして、それを100通りにも訳せるんですよ。だから、一生つきあっていきたい世界だなって思っているし、そのためにはもっと勉強しないと。何事に関しても、ずっと上ってあるし、一生、生きている間は上を目指せるって思うんです。」
里枝子
「加枝ちゃんみたいな人が力を発揮できる職場に巡り会えて、本当によかったと思うの。これからも時々お話を聞かせてくださいね。」

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