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第9回 OKIネットワーカーズ 土屋竜一さん 2007・11
今回は、重い障害を持ちながら多方面で活躍されている土屋竜一さんにお話を伺いました。
佐久市にお住まいの土屋竜一さんは今年43歳。デュシェンヌ型筋ジストロフィーと闘いながら、長らくシンガー・ソングライターとして活躍されましたが、呼吸不全の併発で引退。約10年前に気管切開の手術を受けてからは声も失い、人工呼吸器が終日手放せなくなりました。そんな中でご結婚され、2人のお子さんがいらっしゃいます。
竜一さんは、肉声で発声、会話するための一方弁「スピーキングバルブ」を喉に装着することによって、一定時間の会話ができます。ですが、今回私は、パソコンの盲人用システムを使ってメールで質問し、同じくメールで答えていただきました。まるで対面で会話しているような生き生きとしたお答えをいただきました。
- 里枝子
- 「竜一さんには、信越放送のラジオ番組『里枝子の窓』の公式サイトを制作・管理していただいたり、番組のために作曲をしていただいたり、本当にお世話になっています」
- 土屋
- 「こちらこそ。ラジオは私の原点ですから、いろいろと番組に関わりを持たせていただいて感謝しています」
- 里枝子
- 「まず最初に、病気のことや、今のお身体の状態について伺ってもよろしいでしょうか?」
- 土屋
- 「全身は動かず、声も出せず、そんなとんでもない状態ですが、何とか元気に暮らしています。介護サービスをフルに使っていますし、人工呼吸器の管理や痰の吸引など、妻と両親が24時間体制で介護にあたってくれていますので、そういう助けがあってこその元気なんでしょうね」
- 里枝子
- 「なるほど。では、お仕事のことを中心に伺いたいと思います。竜一さんは作曲家やエッセイストとして活躍して来られましたが、昨年からは更にIT企業の社員として在宅勤務をしていらっしゃるそうですね。びっくりしました」
- 土屋
- 「そうなんです。毎日6時間、家でパソコンと向き合っています」
- 里枝子
- 「主にどんなお仕事をなさっているんですか」
- 土屋
- 「企業のホームページの制作や更新作業、チェックなどが多いですね。会社としては、データ処理とか名刺作成とか、IT関連のあらゆる業務を手がけています」
- 里枝子
- 「どのような流れで勤務されているんでしょう」
- 土屋
- 「まず、グループウェアにつないで勤務開始を伝えます。そして、東京の本社事務所にいるコーディネーターとメールで連絡を取り合います。このコーディネーターは、私たちネットワーカーズと呼ばれる在宅社員にとっては、相撲部屋のおかみさんのような存在。みんな頼りにしているんです」
- 里枝子
- 「その後、作業はどのように進むのですか?」
- 土屋
- 「作業はチーム単位で分掌します。同じく在宅社員であるディレクターの指揮で、各々が担当の作業を進めていくんです。仕事ですから相当の厳しさがありますが、皆さん親切で、温かく接してくれるので救われます。終業時に勤務報告書を提出すると、一日の勤務が終わります」
- 里枝子
- 「会社のお名前は?」
- 土屋
- 「株式会社沖ワークウェルといいます。沖電気工業株式会社の特例子会社です。沖電気の一社員が大けがをして、自宅療養を強いられたことから生まれたベンチャー企業という、ドラマチックな創業秘話があります」
- 里枝子
- 「まあ、そうなんですか…。特例子会社というと?」
- 土屋
- 「障害者の雇用に特別の配慮をした子会社、ということです。沖ワークウェルの場合は、社員の一部を障害者枠とするのではなく、障害者を積極的に雇い入れている点で画期的な会社だと思います。42人の社員のうち、33人が何らかの障害を持っています」
- 里枝子
- 「すばらしいですね。竜一さんが就職されるまでの経緯を教えていただけますか?」
- 土屋
- 「私は音楽を生業としてきたんですが、不景気の煽りを受けて、仕事がほとんど来なくなってしまったんです。2人の子どもを抱えて、それでもって障害者自立支援法。人工呼吸器を借りているので医療費も膨大で、障害年金と妻のパート収入だけではとても賄いきれない。貯金なんかあっという間に底が見えてきて…」
- 里枝子
- 「それで一念発起したというわけですね」
- 土屋
- 「そのとおりです。インターネットで、在宅でできる仕事を探しました。でも検索でヒットするのはどれも誇大広告っぽい。一日1時間で月30万円、だなんて、かなり胡散臭いでしょ。一ヶ月ほどリサーチしているうちに、重度障害者の在宅勤務社員を募集する記事を見つけたんです」
- 里枝子
- 「それは、胡散臭くなかった」
- 土屋
- 「ええ。と言うのも、一日6時間の在宅勤務で時給790円って、条件とすればそれほど良くもありませんよね。むしろ信用できました。そもそも大手企業のグループ会社ですしね。長野在住で重度の人工呼吸器患者、それでも応募資格があるかどうかをメールで問い合わせたんです。そうしたら、すぐに社長から『可能です』っていう返事があって、これはなかなか感じがいいと思って」
- 里枝子
- 「面接試験は、竜一さんのお宅で行なわれたんですってね」
- 土屋
- 「そうなんです。わざわざ東京から社長と取締役がお越しになって。面接なんて25年ぶりで、それはもう緊張しました」
- 里枝子
- 「よく分かります。それで合格になったんですね」
- 土屋
- 「ええ。実際には3ヶ月のトライアル雇用期間を経て、会社と私の意思が一致したというわけです。まったく、すばらしいチャンスでした」
- 里枝子
- 「ところで、竜一さんはどうやってパソコンを操作するのでしょうか?口にスティックをくわえてキーを押しているのではないか、と言った方がありましたが、もしそうでしたら、非常に疲れるのではないでしょうか」
- 土屋
- 「私は、指先でタッチパッドを操作して、画面の中のスクリーン・キーボードで入力しています。スティックを口にくわえたり、手にくくりつけたりしている同僚もいますよ。すごいですよね。彼らに比べれば、私なんか楽なほうです」
- 里枝子
- 「在宅勤務は、重い障害者にも就職の可能性を大いに広げるものだと思うんです。在宅勤務の良い点や課題、在宅で仕事をこなすために工夫していることなどがありましたら教えてください」
- 土屋
- 「これほどの障害があるというのに、忙しく仕事ができるなんて夢のようです。ただ、在宅勤務は孤独との闘いです。他の社員のように電話ができないこともあって、時々、孤立感のようなものに襲われることがあります。課題と言えば、これを克服することですね。そうそう、近々、会社にライブカメラが設置されて、事務所の様子が伺えるようになるらしいんです。これはちょっと役に立ちそうです」
- 里枝子
- 「大変なところもあるんですね…。このお仕事に、特にやりがいを感じるのは、どんな時でしょうか?」
- 土屋
- 「やはり、自分が制作に関わったホームページが公開されると嬉しいですね。作業が難しかったものであるほど達成感も大きいです。それから、給料やボーナスをいただいた時(笑顔)…でもね、最近では、仕事そのものが楽しいんです。労働して稼いで、保険料や税金を支払う。そういう社会人としての責務を果たしている、っていう誇りもありますね」
- 里枝子
- 「今後、お仕事の中で力を注いでいきたいのは、どんなことですか?」
- 土屋
- 「入社した時、社長に『がんばるな、あきらめるな』と言われました。無理をすることなく、できるだけ長く働けるようにしたいですね。とは言え、まだまだ下積みです。専門の知識や技能、ビジネスマナー。そういったものを、少しずつでも確実に身に付けていきたいと思っています」
- 里枝子
- 「企業の経営や、人事に関わる方々に伝えたいことは何かありますか?」
- 土屋
- 「働く場に巡り合いさえすれば、私のような者でも就職して活躍することができる。能力や意欲を持って、働きたいと願っている重度の障害者はたくさんいると思うんです。各企業様には、在宅就労の機会をもっと広げていただいて、さらに、有能な障害者の発掘、あるいは養成を行なう役割なども担っていただけると、非常にありがたいですね」
- 里枝子
- 「さて、竜一さんは長年、作曲家として表現活動を積み重ねて来られました。オリジナル曲をはじめ、地域の人々の依頼に答えて、保育園の園歌や合唱曲など幅広い作品を生みだしていますよね。今は会社のお仕事がお忙しいとは思いますが、創作は続けていらっしゃるんですか?」
- 土屋
- 「ええ。この頃やっと余裕が出てきて、ぼちぼちと創作の時間をひねり出しています。最新作は、子ども達がお世話になっている保育園にプレゼントした『こすずめ音頭』」
- 里枝子
- 「まあ、音頭ですか。楽しそうですね。…竜一さんは、身体が動かなくても、常に誇り高く、意欲的で、ベストを尽くしていらっしゃる。その原動力はどこにあるのでしょう」
- 土屋
- 「だいたい負けず嫌いなんです。欲張りだし。転んでもただでは起きぬ、っていう、あれです(笑)…身体は動きませんが、心には大きな翼がついています。今の自分にできることは何かを、常に考えているんです。目標が見つかったら、それをめざして、できることを精一杯にやる。ただそれだけのことなんですけれどね」
土屋竜一・公式サイト http://ryudio.com/ 沖ワークウェル http://www.okiworkwel.co.jp/
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