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里枝子の短歌集「点描」 - 盲導犬を詠む -
ジャスミンとの思い出
- 「青ですよ」と声かけくれる人のあり盲導犬と交差路渡る
- 四頭の引退犬を看取りくれしこの真心にいかに報いん
- われは花 夫は骨壺胸に抱きアイメイト眠る墓へとのぼる
- われの愚痴 夫のぼやきも顔上げて尾を振りながら聞く盲導犬
- 盲導犬と行けば交差路ごとに声かけくるる人ありて嬉しき
- 四頭の盲導犬と苦楽をば共にしてきぬ三十五年
- 盲導犬の引くを頼りに両側に河音迫る坂下り行く
- 盲導犬座した姿勢で身をそらし耳をそばだて次の指示待つ
- 盲導犬を叱るは胸の痛むことなれど安全歩行のためには
- スクランブル交差点にて盲導犬かまう人いて方向失う
- 盲導犬と笑顔で歩けば「幸せね」とわが肩叩き行きすぎる人
- 盲導犬の入店こばまれ梅雨寒の外に冷たきアイスを舐める
- 炎天下 人の同情などよそに盲導犬はひたすら歩く
- 歩を止めて稲田に雀の啼くを聞く盲導犬もわれと並びて
- 風渡る池の平(いけのだいら)の遊歩道皆盲導犬に微笑て行く
- 盲導犬は落ちたる木の枝避けながら右に左に山道を行く
- 盲導犬を連れずに歩く夢見てる夢の覚めぎわ夢と知りつつ
- 1時間後にタイマーかけて盲導犬に「GO」と声かけ歩きはじめる
- 盲導犬と並んで画面に手を振れば生徒も皆で手を振りくるる
- 「盲導犬と安心して座れる席はどこかしら」看護師さんは席を見回す
- 舞い上がる小さな羽音耳で追い盲導犬としばし佇む
- 盲導犬は病後のわれを気遣いて振り向き振り向き公園までを
- 盲導犬を威嚇するがに猿の声怯まず行けば山は静もる
- 行きたいところへ行ける喜び噛みしめつつ盲導犬と電車の旅を
- 雪の野に盲導犬とわが足の跡続くらん空からみれば
- 足の爪ローズピンクに光らせてサンダルに行く盲導犬と
- 盲導犬の足に火傷をさせぬよう出かける前に路面に触る
- 盲導犬と甘き香りを吸いおれば「ポポーが熟しました」と教えてくるる
- 坂を上るときには歩調が遅くなる歳を重ねたわが盲導犬
- 道に迷いて老盲導犬に伏せをさせ両手を合わせ神に祈りを
- 盲導犬を来年中には手放して休ませようと心を決める
- 三十年盲導犬と啓発を続け来しがまたも宿泊拒否さる
- 雨の日の盲導犬との外出は楕円形なる雨傘使う
ソフィアとの思い出
- 「ソフィア・カム」 初めて呼べば真っ直ぐに盲導犬は胸に飛び込む
- サラブレットの手綱取るごと新しい盲導犬のハーネス握る
- ムスカリ色のワンピース着て春の街盲導犬の尻尾も揺れる
- 名を呼べば身を寄せてくる愛犬に慰められてコロナに耐える
- 秋の日にハープを聴かんと各地から盲導犬と集まる仲間
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