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里枝子の短歌集「点描」 - 生活・社会課題を詠む -
- 子を背負いハーネス握り幾星霜(いくせいそう)通いしスーパー今日店を閉ず
- セルフレジ見えない人らでチャレンジし「難しいね」とため息をつく
- ハザードマップ見ることできぬわれなれば説明受けんと消防署へ行く
- 箪笥開け小鳥の模様のスカートに手を触れてみる春はそこまで
- 水色のワンピース着て街に出る日の待ち遠し忍耐の春
- 現状を俯瞰して観るよすがにと点字をたどり「ペスト」読み切る
- 「邪宗門」音訳されて読みやすく還暦過ぎて完読したり
- ALSを患う女性が排泄に異性の介助を受ける辛さを語る
- ホームから見えぬ仲間が落ちて死ぬ今年四人目われも盲目
- 虹色に輝く滝の夢覚めて現(うつつ)の闇に戻るさびしさ
- 「ひとり寝の子守唄」聞けば想い出す独りの部屋とあのアルペジオ
- 太腿(ふともも)に縦の傷跡 下腹に横の傷跡 撫でていとおし
- 波乱万丈のわが人生のさながらに痛みに耐えてリハの歩を踏む
- 退院し何をするかと尋ねられ「ささやかな人生のつづきを」と笑む
- 見えぬ眼に五輪の想像追いつかずテレビを止めて蝉しぐれを聞く
- キー押せば逝きたる叔父のアドレスもわれを離れて天に昇りぬ
- 駆けてきて「明日は味噌をこねるの」という友が近所にいるは楽しき
- リボン付けるも遠慮していた嫁のわれレモンカラーのスカーフを巻く
- 見た目には分からなくても私には触れれば分かるわが手の歴史
- 向き直り「誰のせいでもないわよ」と静かに言えば相手は黙る
- 優生保護法」問題全面解決を目指し議員会館埋めつくす人
- 白杖で案内乞えば店員は「何が欲しいのかなー」と幼児語で言う
- 朝起きて思い描いた秋の薔薇 夜には心の中で萎れる
- カーソルを動かしながら味わいぬ牢獄からの母こう短歌
- 逃げられぬ人もいるらん目を閉じてラジオ聞きつつ必死に祈る
- 土砂の下から救い出されし蕾椀(つぼみわん)両手で包めば祈りの姿
- 「先生をお連れしたわ」と言いたげに燕は牧師と共に入りくる
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