ここから本文です。

これまでのゲスト

放送日:2025年7月26日

<ゲスト> 桂木惠(かつらぎ めぐみ)さん(「上田小県近現代史研究会」会長)

 今月のお客様は、上田市真田にお住いの桂木惠さんです。桂木さんは、「上田小県近現代史研究会」会長。上田市公民館歴史講座講師。専門学校講師(医療倫理学)。
 今回は、桂木さんのご著書『軍事郵便は語る 戦場で綴られた日露戦争とその時代』のことを中心に、お話を伺います。
 この本は、長野県小県郡県村、現在の東御市から日露戦争に出征した兵士たちが、母校である旧県尋常高等小学校(現、東御市立田中小学校)の校長、小林彦次郎氏に宛てた軍事郵便の解読と評論です。この軍事郵便は日露戦争開戦直後の1904年3月から兵士の帰還が終了した1906年2月までに出された約550通で、彦次郎氏の子孫が保管してきたものです。
 桂木さんに本書出版の動機を伺ったところ、次のようなお返事をいただきました。

「当初は、依頼された郵便物の崩し字を解読してその内容を依頼者に伝えればそれで終わると考えていた。 しかし、 読み進めるうちに極めて貴重な一次史料であることに気づいた。そこには、(1)兵士の目の前で築かれていく戦死者の山 (2)明日の戦死者は自分かもしれないという逼迫した心境 (3)苛酷な戦場の日常 (4)兵士たちの衣食住、例えば足りない衣類や食料、現地の人々の住居を兵営として接収していることなど。日露戦争といわれるが、戦場にされた陸地は日本でもロシアでもなく、朝鮮半島北部から満州といわれる中国(当時は清国)だった。そこに住む人々が否応なく戦争に巻き込まれた。 (5)戦場とされた地域の人々への露骨な差別意識 (6)無事を伝える。などなどの本音が書かれていたからである。」

私も本書を読みました。兵士たちの肉声が詰まっており、日露戦争の実態が見えてくる本でした。しかも、とてもわかりやすくまとめられていますので、一人でも多くの方に桂木さんのお話を聞き、この本を読んでいただきたいと思いました。

軍事郵便は語る 戦場で綴られた日露戦争とその時代 (信毎選書) | 桂木惠 |本 | 通販 | Amazon

(文/広沢里枝子)

前のページへ      次のページへ