里枝子の短歌集「点描」 - 自然を詠む -
- 白樺の幹に触れつつ梢まで思い描きて空を見上げる
- 盲目のわれの世界に線は無し空と大地を区切る線さえ
- 手に触れるここにもそこにも蕗の薹春の鼓動が形になりて
- 触らねばわからぬわれも触るなと怒鳴りし人も許せよ桜
- 膝折りて指に探れば触るるものみな水仙にして花に蕾に
- 巨大なる獣の背中行くごとし素足に春の芝生を踏めば
- 静まりし明神池に鴨たちの笑っているような声響きあう
- 花の名も色をも知らぬわれなれど野辺に遊ばん春が来たなら
- 露草がそこにと聞けば浮かぶ青見えぬ眼(まなこ)でじっと見つめる
