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これまでのゲスト

放送日:2010年9月25日

井出今日我(いできょうが)さん

 今月のゲストは、井出今日我君、20歳です。
 今日我君は、長野大学社会福祉学部の3年生。筋肉が徐々に衰えていく難病、筋ジストロフィーと闘っています。
 現在、今日我君は自分で歩くこと・立つことができません。両腕にも殆ど力が入らず、外出には電動車椅子を使っています。けれども、夢に向かって、様々な挑戦をしてきました。
 高校2年生のときには、スイスのブライトホルン、4164メートルの登山に挑戦。登頂はできませんでしたが、仲間たちと助けあって4000メートルにたどり着きました。
 4年前からは、電動車椅子サッカーに挑戦。この夏、「2011年10月下旬からフランス・パリで行われる第2回パワーチェアーフットボール大会の日本代表になる」ための日本代表候補、14名の一人に選出されました。
 番組の前半では、この夏、美しい沖縄の海でダイビングに挑戦した体験。今日我君の障害観。人生の転機になったできごとなどを伺う予定です。
 そして後半では、今日我君の電動車椅子サッカーにかける思いを熱く語っていただこうと思います。
 スポーツを通して、自身の人間的成長と、人とのつながりをめざす今日我君は、輝いています。どうぞ、彼の言葉を聞いて、応援してください。

(文/広沢里枝子)

今日我君の言葉から 今日我のチャレンジ〜井出今日我のブログworld より
 僕は小学六年の後半から車椅子生活を送るようになりました。
 車椅子での生活が始まってから今まで生活してきた中で強く感じることがあります。それは、健常者と障害者の間に大きく存在する「未開の部分」の事です。
 「未開の部分」という言い方は分かりづらいかもしれません。一般には「壁」という言い方がされていると思いますが、僕はあえて「未開の部分」という言葉を使いたいと思います。そこには僕の強い思いがあるからです。
 健常者には当たり前に出来ることが障害者には出来ないことがたくさん有ります。一言で「障害者」といっても、一人ひとり「出来ること、出来ないこと」がみんな違います。そのことが理解されないことで誤解や不和が生まれやすいなあと思います。
 そしてさらにそこから生まれた誤解が、障害者と健常者の間の対等な人間としての関係までも壊してしまうことがあると思うのです。
 「その位自分で出来るだろ・・・」とか「こんなに手伝ってあげているのに・・」という健常者と、色々手伝ってもらっている中で障害者の「出来ないからお願いしているのに・・・」とか「我慢しているのに・・・」というお互いの理解のなさから生まれた対立が起きた時、「もう、お前の事なんかしらない!」「だったら良いよ! 」って喧嘩したとします。健常者は、それでも明日から変わりなく生活を送ることができます。
 しかし、障害者はそのままでは生活できなくなってしまうのです。手伝ってもらわなければ生活できなくなってしまう障害者は、納得がいかなくても謝ったりしなければならなくなります。こうなると、人としての心の通い合いがなくなってしまい、そこに両者を離してしまう部分が生まれてくると思うのです。
 でも、僕はこの両者を離している部分を「決してつき破ることが出来ない壁」だとは思いません。それは、お互いを理解し、熱い心を持っていればこれから開いていくことが出来る「未開の部分」だと考えているのです。

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